
「食肉のドン」の異名を持つ大手食肉卸業「ハンナン」(大阪府羽曳野市)の浅田満元会長(65)が、大阪府警捜査2課に詐欺容疑で逮捕された。政界からスポーツ、芸能界まで幅広い人脈を持つドンの逮捕だけに、困ってしまいそうな人たちがあちこちにいる。
浅田を始めとする計11人が逮捕されたのは、BSE対策の国産牛買い上げ事業を巡る詐欺容疑である。
「大阪府食肉事業協同組合連合会」(府肉連)が、加盟業者らから集めた国産牛肉に輸入用加工品が混じっている事を知りながら、全て国産と偽装して全肉連に買い上げを申請し、6億400万円を詐取した疑いだ。
「事件自体は01年12月に起きていますが、警察の幹部は逮捕前に、”しがらみがなくなった”という言い方をしていた。浅田と昵懇だった鈴木宗男が逮捕され、その親分格の野中広務元幹事長が政界を引退したことに加え、4月12日付の人事で大阪地検の特捜部長が交替したこともあり、遂にゴーサインが出たようです」(府警詰の記者)
が、ドンは強制捜査が入る直前、自宅から”脱出”するという異例の挙に出た。捜査情報の漏洩は明らかだ。
「浅田は警察や行政にも強い影響力を行使していた。正直いって、よくぞ逮捕したと思いますよ」(在阪のジャーナリスト)
それほど広い人脈を持つドンの逮捕だけに、影響が各界に波及するのは必至だ。一番困っているのは誰か。
「7月に参院選に出馬すると見られている鈴木宗男でしょう。ただでさえ当選の可能性は低いのに、このタイミングで散々浅田との関係を報じられるのは痛手です。それ以上に、強制捜査で押収された資料は”宝の山”と捜査員は言うので、何が飛び出すのか分かりません。」(先の記者)
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著書『食肉の帝王』にそう記した溝口敦氏は、浅田満の実像に最も迫ったジャーナリストだ。
「私の取材に対し、府下の金融機関の行員は”長期間にわたってハンナンの関係会社から鈴木宗男に約1500万円が毎年振り込まれていた”と話しています。少なくとも、この金は政治資金収支報告書のどこにも記載されていない。北海道の後援企業から受けとった総額1100万円の賄賂で起訴された宗男ですが、ハンナンからの金銭授受はその比ではない。高級車セルシオの貸与といい、宗男はハンナンの資金で当選したようなものです。」(溝口氏)
芸能人は100万円
鈴木宗男の盟友、松岡利勝議員との関係についてハンナンの元社員はこう語る。
「6年前、宗男さんが”私の仲間だ”と浅田さんに松岡議員を紹介していました。浅田さんはよく”鈴木宗男に電話してくれ”と周囲に命じていたし、宗男さんとは親密な仲でした。が、自ら松岡議員に電話したり、頼みごとをしたという記憶はない。松岡議員とは宗男さんの顔を立てて付き合っていたという感じですね」
松岡議員はこう話す。
「(浅田にあったのは)鈴木先生からのご紹介ではございません。また、金銭的な(問題を指摘されるような)事実は全くございません」
先の記者によれば、
「捜査2課は銀行口座の調べを進めているので、両者の関係は早晩、明らかになると思います」
太田房江・大阪府知事も2000年7月、大阪・羽曳野市の浅田邸に招かれて宴席に出席し、批判を浴びた。
「太田知事のご主人は浅田の親族の結婚式に出席している。浅田としては知事に出てほしかったのでしょうが、それではいかにも具合が悪い。そこでご主人を代理人に立てたのでしょう。これを機に府政の大改革を望みます」(共産党府議)
太田知事はこう言う。
「浅田さんの自宅でご馳走になったことについては猛省しております。主人が浅田さんの親族の結婚式に出たのは1度だけですし、それ以外、主人の浅田さんとの関係は一切ありません」
浅田の人脈は政界に留まらない。02年6月、大阪市のリーガロイヤルホテルで行われた「浅田の側近」とされる人物の娘の結婚式には、松山千春、千昌夫、なべおさみなど多数の芸能人が招待されている。
「羽曳野市には迎賓館と称される大邸宅があって、政治家ばかりか芸能人やスポーツ関係者も大勢来ていた。小遣いほしさにネクタイを手土産に訪ねてくる女優もいるし、宝塚出身の加茂さくらなどとは付き合いも古い。もっともグループ企業の社員によれば”芸能人には100万円も包んで渡しておけ”というのが浅田の基本的なスタンスで、一緒に出歩くのは浅田が”ちいちゃん”と呼び、家族ぐるみで付き合っていた松山千春くらいだそうです」(溝口氏)
加茂の事務所はこう言う。
「浅田さんは、加茂の後援会長をしてくださっていた中川一郎先生から紹介されました。当時、浅田さんの依頼で何度か歌いに行ったことがあります。関西のある県に行った時は吉本興業の方たちも見えていました。しかし、もう7、8年くらいも前のことですよ。いまは無関係です」
スポーツ界で結びつきが強いのは八角親方(元横綱北勝海)だ。浅田の長女が、九重親方の元力士と結婚したのが84年。この時、北勝海が所属していた九重部屋の後援会長を務めていたのが宗男である。
長女の婿は、現在、藤井寺市内で飲食店を経営しているが、八角部屋の大阪稽古場はその隣にある。
「この稽古場は浅田が当時の九重部屋のために建てたもので、いまでは毎年、春場所に八角部屋の力士が寝泊まりしています。混乱を避けるためか、”逮捕は場所が終わってから”という話も聞きました。浅田は90年に北勝海の仲人も務めているし、一時は三女を彼に嫁がせようとしていたほどです」(先のジャーナリスト)
結局、北勝海は90年に輝志子夫人と結婚。浅田は無念を噛み殺して仲人を務めたとされるが、ちょっとやそっとの仲ではないことは確かだろう。八角親方の母、保志美江子さんが言う。
「鈴木宗男先生に仲人をしていただく予定でしたが、選挙で忙しくなったということで浅田さんに代わっていただいたのです。私ら浅田さんのことは知らないんです」
結局、八角親方は昨年離婚した。
最後は野球界。ハンナンとの関係で知られるのは阪神の木戸克彦2軍監督だ。
「木戸さんはPL学園の出身。ハンナンは昔からPLのタニマチで、野球部に肉を差し入れていた。PLに取材に行って”最高の肉をご馳走になった”という記者はかなりいます。木戸さんは星野体制の1年目に、ハンナン関係者との昼食をセッティングして、”お前は何様だ”と怒鳴られた。ハンナンとの関係をアピールしたつもりが完全に裏目に出た」(阪神担当デスク)
阪神球団の広報部長は、
「浅田氏の甥御さんはPLの野球部で木戸監督の後輩でした。その関係で弟さんと面識があり、監督の実弟は弟さんが経営する会社にお世話になっているそうです。が、浅田氏本人とは1度しか会っていないと聞いています」
大阪府警には、疑惑の全容解明を期待したい。